校長のあたまのなか

どろだんごの話

2024年4月24日 14時27分

 ピーター・ドラッカーが50年ほど前に書いた「マネジメント」という本の中にこんな話があります。石切り場で働く職人に声を掛け、「あなたは何をしているのか」と尋ねたところ、1人目は「生活の糧を得ている」、2人目は「職人として一流の仕事をしている」、3人目は「教会を作っている」と答えたそうです。マネジメントが分かっているのは3人目の職人だというのです。

  私たちの職場で考えてみましょう。「あなたは何のために学校にいるのですか」と尋ねられたら、「給料をもらうため」「自分の優れた授業力を発揮するため」と答えますか? マネジメントが分かっている教職員の答えは、「学校経営方針を実現させるために学校にいる」です。本校の学校経営方針は、「『一人一人が輝く』学校づくり」です。一人一人を輝かせるためにみなさんはここにいるのです。

 どろだんごに細かい粉をつけて磨くと、自分の顔が映るくらい輝くようになります。園の子どもたちでも根気よく磨いてピカピカにしていきます。小学校の子どもたちをだんごに例えると、一斉指導ではどの子も同じ力加減で同じ磨き方をしているようなものです。輝かせる前に割ってしまってはいけません。

 紙やすりには番号が付いていて、番号が大きいほど目が細かくなります。一斉学習は、どのだんごも同じ目の粗さの紙やすりでこすっているようなものです。定型発達の子だけをターゲットにして学習を構想すると、子どもによっては、磨かれるのではなく、削られたり、傷をつけられたりすることになりかねません。個別最適な学びでは、その子の状態によって紙やすりの番号を変えるような繊細さが求められます。ドリルパーク等は個に合わせた学習ができるツールだと感じました。

  笠原小学校の教職員は、子どもたちが「一人一人が輝く」ようにそれぞれの立場で力を発揮してほしいです。子どもたちが輝くことの照り返しで、みなさん自身も輝いてほしいと願っています。

(第3回職員会議 校長指示事項より)

せっかく校長室に来たんだから

2024年4月23日 11時49分

 3時間目に1年生の学校探検がありました。11人の1年生が、2人または3人組で校舎内をまわり、シールを集めます。「失礼します。」「失礼しました。」のあいさつも言えてりっぱでした。

 「せっかく校長室に来たんだから、校長先生になっていきなさい。」と言うと、みんな校長先生の気分で仕事のまねをしてくれました。ノリのいい1年生たちです。気分が和みます。ありがとう。

校長室1

校長室3

校長室2

海岸まで3.5㎞

2024年4月19日 10時40分

 本日、晴れ。校内巡視中。校舎3階窓から南を望む。海岸まで3.5㎞。最近、各地で大きな地震が続いているので、心配。ここで地震が起きたらどうなるだろうという想定を頭の中でいろいろとしてみた。

3階の校舎から

PTA活動の負担軽減のために

2024年4月18日 10時42分

 415日(月)の夜、PTA評議員会が行われました。令和6年度が始まったばかりなのに、もう令和7年度の会長決めの話が出ているのです。PTA総会のやり方についても活発に議論が交わされました。コロナ禍が明けて、すべてを今まで通りに戻さなくてもよいと感じます。以下は校長挨拶の一部から。

 今後、少子化が一気に進みます。今のうちから、PTAの見直しを行っておかないと苦しくなると思います。今年の1年生は11人です。今の1年生が6年生になったときには、保護者の負担は今よりもずっと重くなるでしょう。校長としては、入学式や卒業式の会長挨拶も求めません。お子さんに近い席で式に参加していただければ十分です。集まらなくてもよい会合は減らし、なくてもいい部は廃止・縮小すればよいと思います。親も先生も我慢比べのような、やらされ感いっぱいのPTAはやめて、できる人ができるときに学校と子どもたちのために協力できる組織に変えたいと強く思います。ぜひご協力ください。

学校探検再開

2024年4月18日 10時24分

 4月16日と17日の2日間は、新任校長研修で学校にいませんでした。校長は何のために学校にいるのかを深く考えさせられた研修でした。研修で感銘を受けたことを教頭さんと共有しました。よりよい学校づくりに役立てていこうと思います。

 135人の全校児童の顔と名前を早く覚え、先生たちの様子をつかむために、校長の学校探検の再開です。ついでに写真を撮って、みんなのがんばりを外部に発信するのが、役目だと思っています。

なるべく小さな幸せと

2024年4月15日 17時53分

 今夜はPTAの会合があるので、役員さんの到着を待っているところです。その間にちょっと考えたこと。

 THE BLUE HEARTS(ザ・ブルーハーツ)の曲に「情熱の薔薇」があります。個人的に大好きな曲で、今朝の通勤途中の車でも聴いてきました。TVコマーシャルや番組のBGMでも流れることがあるので、サビの部分だけは耳にしたことがある人もいるでしょう。

 私は、しばらく幼児教育の仕事に携わっていたので、ルソーの「エミール」を研修資料作成のために読み返したことがありました。情熱の薔薇の歌詞の意味が深く、「これ、エミールじゃん」と妙に納得してしまったことがあります。

 なるべく小さな幸せと なるべく小さな不幸せ なるべくいっぱい集めよう そんな気持ちわかるでしょう

 ルソーはエミールの中で、自由や幸福について論じています。自分の能力を知り、理性でコントロールでき、多くを望まないことが幸福であり、欲望と能力の不均衡が不幸につながると言っています。

 甲本ヒロトは、ルソーの思想に近いと感じます。自分の能力と欲望のバランスが取れているから、「実現可能な小さな幸せと、ダメージの小さい不幸せを集めたいっていうオレの気持ち分かるだろう」と問うているのです。

 うん、よくわかる。昔は気にならなかった歌詞が今は胸にグッとくる。そのうえで「情熱の真っ赤なバラを咲かせるために心のずっと奥の方にある花瓶に水をやるんだぞ。」というメッセージもすばらしい。甲本ヒロトさん、あなたはすごいです。

 でも、「見てきた物や聞いた事 いままで覚えた全部 でたらめだったら面白い」の歌詞は、教員としては困ります。ハイ。

きれいなジャイアン

2024年4月15日 10時03分

きれいなジャイアン100_0195

 初めて子どもたちに出会った4月5日に私は、「きれいなジャイアンを目ざします」と言いました。その日から子どもたちに「なんでジャイアンなの?」と聞かれることが多くなりました。

 きれいなジャイアンは、てんとう虫コミックス36巻の「きこりの泉」に出てきます。ひみつ道具のきこりの泉に物を落とすと、女神ロボットがあらわれます。正直に答えると、すてきな物に交かんしてくれるのです。よくばりなジャイアンは、ガラクタを泉に入れようとして、自分が落ちてしまいます。女神ロボットがつれてきたのが「きれいなジャイアン」なのです。

園の保育者と小学校教員とのギャップ

2024年4月12日 13時33分

 「環境」と「遊び」の認識が全く違うと感じます。

 園は「環境を通して行う教育・保育」なので、「環境」とは遊びの場の設定や準備そのものを指すことが多いです。

 小学校では、「環境教育」「自然環境」などの理科的な使われ方と掲示物や施設等を含め「教室環境」という言い方をします。

 園の保育者は、子どもたちがとことん遊びに没頭するような仕掛けを考えるのが得意です。遊びこめないときは、「環境」が悪かったのだと反省します。どうやって子どもたちを遊ばせようかと日夜考えているのです。

 小学校の教員にとって、遊びは子供たちへのご褒美のようなものです。がんばったときや学期末のお楽しみ会で遊ばせてくれます。ふだんの学習では、どうやって遊ばせないようにするかに気を遣います。余分なものは机上に出さないのも遊ばせないためです。

 遊べば遊ぶほどほめられていた園から小学校に入学した幼児は、戸惑います。「小学校でも遊んでもいいんだ」と知ることで、心理的安全性が高まります。

 「かずのおけいこどうぐ」は、幼児にとって宝箱です。でも、小学校教員は、いかに遊ばせないようにするかに気を使い、必要なものだけを机上に出させ、指示があるまで触らせません。幼児が小学校で初めに身に付けるのは、待つこと、聞くこと、我慢することになりかねません。

 笠原小では、算数の学習が始まる前に、1年生に「かずのおけいこどうぐ」でとことん遊ぶように指示を出しました。そのかわり、時間が来たら自分で片づけをするという約束をしておきます。

 

幼児期の終わりまでに育ってほしい姿(10の姿)とは?

2024年4月12日 11時13分

 10の姿を園と小学校が共有し、つないでいくことが求められているのですが、小学校の先生方にとっては10の姿のとらえ方が分かりにくいと思います。勘違いされやすところですので、まとめてみました。

 園では、小学校教育の前倒しを行っているわけではありません。 園で育ててくれた力を、小学校側がゼロスタートでリセットしないように引き継いでいきましょう。

10の姿.pdf

ただ、遊ばせているわけじゃありません。

2024年4月11日 16時25分

 1年生が、遊んでばかりで学習していないように見えるかもしれません。でも、これがスタートカリキュラムなのです。教科の枠と時間の枠を外して弾力的な活動を行い、小学校の生活を園に近づけています。スタートカリキュラムが必要なわけをまとめてみました。ぜひ、ご覧ください。

スタートカリキュラムが必要なわけ.pdf

インクルーシブ教育って何

2024年4月10日 10時15分

 ドラえもんに出てくるジャイアンは、暴言・暴力があり、衝動性が強いので、特別支援学級(自閉症・情緒)?

 のび太くんは、学習についていけず運動も苦手なので、軽度知的障害と発達性協調運動障害(DCD)のゆっくりさんだから、特別支援学級(知的)?

 そうやって、子どもを選別して、できすぎ君としずかちゃんだけの通常学級になったら、先生は楽かもしれません。でも、学級として楽しいでしょうか?

 いろんな子がいるから、事件やドラマが起きます。それが学級経営のだいご味ではないでしょうか。毎週、事件が全く起きない刑事ドラマをテレビで見たいと思いますか?

 50年前に発表された小説に「兎の眼」(灰谷健次郎 作)があります。笠原小の図書室にもあります。久しぶりに読み返すと、インクルーシブ教育の原点を感じます。若い先生方には、夏休みにぜひ読んでほしいです。

(4月9日 特別支援教育の研修にむけて)

チコちゃんみたいな子を増やしたい

2024年4月10日 09時59分

 大人も分かったつもりになっているだけかもしれません。例えば、磁石がなぜくっつくのか、使っているうちになぜ電池がなくなるのか、先生方もきちんと説明できないのではないでしょうか。磁力とか、電流とか、イオンとか何か別の用語を使って話すことで、分かったつもりになっているだけかもしれません。リニアモーターカーや電気自動車が次世代の移動手段になる未来において、磁石や電池にはまだ研究の余地があります。

 大人も子供も、知っているつもりになっているだけで、チコちゃんに叱られない限りは、それに気づきません。

 永遠の5歳児であるチコちゃんは、好奇心旺盛で当たり前のことを疑うクリティカルシンキングができる子です。笠原小からも「なんで?」と鋭く尋ねるチコちゃんを増やしてください。

 子どもの思考力を高めるには、試行錯誤の機会と時間を十分に保障しなくてはなりません。時間による効率(タイパ)を求めすぎると、失敗が許されない窮屈な学習になります。

 学びを楽しむためには、教師主導によるやらされ感のある授業ではなく、子どもに主体性と自由度をもたせた学習スタイルを構築する必要があります。40分間の学習展開を予想しているくらいでちょうどよいでしょう。

(4月8日 校内研修を始めるにあたって)

すごい石の話

2024年4月10日 09時18分

 笠原小には50年前からすごい石があります。開校100周年の記念に地域の方が校舎1階の階段の登り口に置いてくれました。

 自彊の石(がんばりの石)といいます。本当にがんばりたいときにこの石に触ると、パワーアップして力が出せます。ただし、のび太君のような怠け者がさわってもダメです。自分で「ギリギリまでがんばって、ギリギリまでふんばってピンチの連続」のときにこの石に触ってパワーをもらってください。

(4月5日 始業式の校長の話から)

4月1日 先生方へのはじめの話

2024年4月9日 17時08分

 私は、笠原小に来る前に隣の市で幼児教育や特別支援教育に3年間かかわりました。幼児教育の良さを小学校につなげたいという願いをもっています。

 園の子どもたちは自己肯定感や自己有用感が小学生よりも高いと感じます。理由の一つが保育者による声掛けにあると思います。本校の職員にもぜひまねしてほしいです。

 何か問題が起きたとします。どんなときもまずは、目線を合わせて「どうしたの?」とききます。次に「何をしたかったの?」と、子どもの思いを受け止めます。仕上げは「先生に何かお手伝いできることある?」です。これからは、「何やってるの。やめなさい。だめでしょ。」は厳禁です。はじめのうちは「別に」といわれるかもしれませんが、半年続ければ必ず変わります。子どもを大切にする人権教育の原点です。もちろん、明らかにその子に非があれば叱ることをためらってはいけません。ただ、初めから高圧的に指導するのはやめましょう。