司会の「卒業証書授与」の声で起立し、来賓に一礼、国旗に一礼して壇上に立つと、違和感に気づきました。卒業証書が置いてない・・・・辺りをさりげなく見まわしても、見つからない・・・・ テレビのドッキリ番組の企画のような状況でした。
学級担任による卒業生の呼名が始まってしまい、児童が動いているのが壇上から見えました。「一度、動きを止めなければまずい。」卒業証書がセットされていないことを伝えようとしましたが、うまくいきません。このままだと、出席番号1番の子が目の前に立っても渡すものがない・・・
放送担当のA先生に目配せしましたが伝わらず、やむなく小声で「証書を持って来て」と言いました。教務主任に伝え、あわてて証書を取りに行き、その間、直立不動のまま約2分間待ちました。会場の方々は、なんで止まったままなのか不思議に思ったことでしょう。
令和六年度袋井市立笠原小学校卒業式 校長式辞
三十二名の六年生のみなさん、卒業、おめでとうございます。
笠原小学校では、年間約二百日、六年間で千二百日近く、登校する日がありました。学級編成がなかったので、ここにいる仲間とは、家族以上に長い時間を一緒に過ごしてきたことになります。仲良く過ごせたことも、お互いが衝突したこともあったでしょう。このままそろって浅羽中学校に進学しますから、この仲間たちとみなさんのふるさとである「笠原」をずっと、大切にしていってください。
学校の玄関の前には、開校百三十周年記念のときに建てられた二宮金次郎の銅像があります。知っていますか。二宮金次郎は、江戸時代の終わりに今の神奈川県小田原市で生まれた人で、特に静岡県西部では、今でも尊敬され、多くの学校には、銅像が建てられています。二宮金次郎の報徳の教えの中から、卒業生に「小を積めば、則ち大と為る」、四字熟語にすると「積小為大(せきしょういだい)」について伝えます。
金次郎さんは子どものころ、洪水のあと捨てられていた稲の苗を拾い集めて、自分で田んぼを作り、秋には俵いっぱいのお米を収穫したそうです。小さな努力の積み重ねが大きな成果につながることを実感し、大人になっても続け、周りの人にも広めたのです。
小さなことをおろそかにしないこと。怠けたくなる気持ちが出ても自分をふるい立たせること。すぐに結果が出なくてもあきらめないこと。金次郎さんの教えは、今でも通用します。自分自身を成長させ、よりよく幸せな人生を送るために、「積小為大(せきしょういだい)」の気持ちを忘れずにいてください。旅立ちのときには、二宮金次郎の像と校舎をバックにおうちの人と記念写真を撮ってみてください。
保護者の皆様、お子様が立派に成長されたことを心からお慶び申し上げます。お子様の晴れ姿を目の前にして、さざまなご苦労も喜びに変わったことかと思います。これからのお子様の健やかなご成長を、保護者の皆様と共に、笠原小学校職員一同願っております。
本校の教育に日々ご理解・ご支援をいただだいております地域の方々、ならびに袋井市教育委員会の方々に、本校教職員を代表いたしまして深く感謝申し上げます。この子たちは「笠原の宝」です。これからも、温かく見守っていっていただけますよう、お願い申し上げます。
最後に、卒業生と保護者の皆様の未来が明るく、笑顔に満ちたものとなることを祈念して、式辞といたします。
令和七年三月十九日 浅羽学園袋井市立笠原小学校長 岡本正彦