校長のあたまのなか

園にある築山はすごい

2025年9月11日 09時49分
園と小学校との接続

 磐田市で幼児関係の業務に携わっていたときに、公立園から「築山が低くなってきたので、土を入れてほしい。」という要望を受けることがあった。園を訪問すると、砂場と築山はセットで園庭にあることが多かった。

 園長さんや主任さん、元園長さんたちに話をうかがうと、園にとって築山は大事とのこと。小学校の校庭や遊具にも築山があることがあるが、それほど重要だとは(個人的に)思っていなかった。

 園児は、山を上ったり下りたり飽きもせず遊ぶ。ときには、水を流して泥だらけになって遊ぶ。滑って転ぶこともあって危ないのに、築山が大事なのは、「感覚統合」にあると知って、私は衝撃を受けた。

 園児は、山を上ったり下りたりすることを繰り返す中で、関節の角度、筋肉の収縮の程度・力の入れ具合などを脳に情報として送る。やがて、自分の体に対する実感「ボディ・イメージ」を高めていき、自分の体を思い通りに動かせるようになっていくのだ。

 築山の上り下りだけでなく、木箱から飛び降りたり、缶ぽっくりや竹馬、一本歯の下駄で遊んだりすることも、園児の感覚統合を促す。私たちの体は、生まれながらにして自分の思い通りに動かせるわけではない。幼児期の遊びや活動を通して、いろいろなことができるようになっていく。園の先生が「遊びそのものが学び」と言う意味は、小学校教員が思っているよりもずっと深い。

 子どもは小さな大人ではない。できないことがいっぱいある。

 しかし、できない理由が「感覚統合」のつまづきにあると考える小学校教員は少ないだろう。小学校教員は「発達段階」という用語は使うが、「感覚統合」と言う用語にはなじみがない。

 架け橋期の教育が重要視されるようになった今、小学校教員は、園の子ども理解を学び直すべきである。低学年で○○が苦手な子に対して、「感覚統合」のつまづきがあるのではないか、とアプローチできる小学校教員は救いとなる。不器用な子、敏感な子、発達障がいの子としての困り感だけで支援を行うのではなく、専門性を高め、子どもアセスメントを行える力量が求められる。個に応じた指導とは、学力だけではないのだ。

 行政機関で幼児教育に関わり校長になった私は、自校の教員に「園と小学校との接続」の大切さを伝えたいと思っている。そのために、ホームページ等で情報発信をしている。

 詳しく学びたい方には、参考図書として「保育者が知っておきたい発達が気になる子の感覚統合」(Gakken保育Books 著・木村 順)をお勧めする。

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