先生が言っていることが正しいとはかぎらない
2025年5月27日 16時35分校長になった自分がこんなことを言うのもおかしいかもしれないが、「先生が言っていることが正しいとはかぎらない。」低学年の子どもたちにとっては、担任の言葉は親の言葉以上に重いので、気をつけなくてはならない。
小学校低学年のときの私の担任が、真顔でこんなふうに言っていたのをよく覚えている。「勉強すると脳みそのしわがどんどん増えて、頭がよくなります。」
重ねて、「脳が大きければ頭がいい」と、信じていた。ルチ将軍の影響かもしれない。現在、月曜の深夜にNHKで「プリンプリン物語」が再放送されている。(録画して休日に楽しんでいる。)小学校6年生のとき、夕方に観ていた人気だった人形劇である。ルチ将軍は、アクタ共和国の独裁者で、頭が異様に大きい。決めぜりふは、「知能指数は1300」だった。語尾を上げてよくまねしていた。私は、自分なりに「頭がいい」というのは、しわくちゃで大きな脳をもっている人だというイメージをもつにいたった。
現在の科学では、明らかにそれが間違いだとされている。いくら勉強しても、脳のしわは増えないし、しわと頭の良さは関係ない。脳の大きさや重さと知能の高さとの相関関係もない。
当時の担任に悪気はなく、うそを伝えようという意図もなかっただろうと思う。結果として、子どもにとって影響力のある大人やメディアの情報によって、真実がゆがめられて認識されてしまうことが起こりうる。
10年ほど前に、瓶の中のごはんにやさしい言葉を掛けると、ごはんが腐らないと信じて、教室で実験していた同僚がいた。今思えば、あれも怪しかったと思う。でも、その学級の子たちは真面目に信じて実践していた。
ネットでのあやしい情報があふれる現在では、昔以上に子どもに悪影響を与えかねない。だからこそ、私たち教師は、真に正しい知識を子どもたちに伝えなくてはと、戒めたい。
子どもたち自身にも「先生の言っていることが正しいとはかぎらない」と教え、自分で考え、判断する力を育てていくことが大切だ。頭がいいとは、論破できることではない。正しい情報を取捨選択し、自分で適切な判断ができることを言うのだ。