私立高校無償化で今後起きかねないこと
2025年10月3日 17時41分今晩、午後6時30分からPTAの会合がある。それまで時間があるので、かねてから危惧していることを書いてみる。
子育て支援政策の一環として、高等学校よりも早く、保育料の無償化が実施された。その結果、どんなことが起きたのか。磐田市の幼稚園保育園課に勤務していた3年間で見聞きしたことを、支障がない範囲で伝えたい。今後、公立高校にも園と同じことが起きるような予感がするからだ。
磐田市では令和5年度に、私立園に在籍する園児数が、公立園に在籍する人数を上回った。親は、施設が新しくきれいな私立園を選ぶ傾向が強まった。小学校に隣接する幼稚園は小規模化が進行し、入園式が4人で行われることがあった。全園児数が20名以下の公立幼稚園が出始めたのである。
築70年近い古い園舎は建て替えられず、幼保再編計画のもとに統合されたり、私立園化したりした。過去10年間で公立園が10園以上なくなったのである。
公立の幼稚園・保育園・こども園は、子どもの主体性を大切にした質の高い保育が行われていることが多かった。私立園では、園独自の方針のもと、昔ながらの一斉保育が行われていることがあった。公立園の教育・保育レベルが高くても、発信力が弱いせいか、親の目に私立園の方が、魅力的に映ってしまうようだった。率直に言えば、公立園の人気が落ちたのである。
さて、高等学校の話である。施設がよく整備され、部活動の実績もあり、授業のサポートや大学への推薦制度が手厚い私立高校は、保護者にも生徒にもアピール効果が高いだろう。学費が高いからと敬遠していた家庭が、無償化ならばと、私立高校を選ぶのではないか。
県立・公立高等学校の定員割れ、学力レベルの低下が起きかねない。甲子園の野球を見ても、出場校は私立高校ばかりである。部活動で活躍したい子も、私立に流れるのではないか。結果として、県立高校の再編や統合が加速すると予測する。園で起きたのと同じことが今度は高等学校で起きると思う。
弊害としては、教育格差が広がることが揚げられる。園のときもそうだったが、私立に対しては、行政は補助金は出すが、教育委員会等によるコントロールは難しくなる。県や市としての教育の方針を示しても、私立は、教育課程や授業時数や学習内容まで独自色を強めるだろう。
保育費や学費に差がなくなれば、公立がスタンダードではなくなり、幼児の段階から私立志向が強まると思う。そんな未来が10年後には来そうな気がする。