校長のあたまのなか

笠原の崖はなぜ崩れやすいのか

2025年9月25日 16時16分
防災

 10月31日の講演会に向け、笠原地区の地質や微地形のフィールドワークを続けているところである。

 地質図で「段丘堆積層(td)」として示される部分は、実際には小規模な段丘が複雑に分布し、段丘面上に起伏を生じさせている。

地質図

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 三輪地区の「段丘堆積層」は、未固結の褐色の砂の層にさまざまな大きさの礫が詰まっている。礫の大きさは淘汰されていない(そろっていない)。素我神社社殿西側の崖は崩落し、樹木の根が露出している。

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 三輪神社北側の高さ1mほどの崖は、急な角度で崩落している。

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 三輪から柏木に向かう道路から見た段丘崖は、崩れないように根元がコンクリート版で土止めされている。

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 県道より西側には、陥没してしまったところがある。(現在は修復済み)豪雨などで、礫層中の砂の部分が流出すると、礫だけが残されて沈降し、すき間が陥没したと推定できる。

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 笠原小の裏手の墓地は、上位段丘である。墓地の崖には、表土が流出し、穴やすき間が見られる。

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 「段丘堆積層」は、第四紀の新しい地層で、あまり固まっていない。地質調査所が昭和32年に発行した「五萬分の1地質図幅説明書 見付・掛塚」によれば、「浸食を受けると縦に崩落して切り立った崖をつくりやすい」特性がある。

 分かりやすいように断面図で示すと以下のようになる。

① 地層中に水分をギリギリたくわえている状態

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② 限界を超えて崩落

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 地層の中の砂の部分だけが多量の地下水といっしょに流れ出てしまうと、礫が沈み込む。崖の部分は砂がなくなると礫が崖を転がり落ちる。 1時間当たりの雨量が50ミリを超えるような豪雨となった場合、笠原地区の崖は、崩落する可能性がある。崖から茶色い水が吹き出したら、要注意である。

 笠原地区にある崖の中でも、崩落の危険が特に高い場所が、「土砂災害計画区域」に指定されている。